2015年11月06日

新会社「TOYOTA RESEARCH INSTITUTE, INC.」設立に関する記者会見

 

 トヨタ自動車(株)は、「人工知能技術」の研究・開発強化に向けた新会社「TOYOTA RESEARCH INSTITUTE, INC.」設立に関する記者会見を行いました。

 新会社の最高経営責任者(CEO)に就任したギル・プラットや当社社長の豊田章男によるスピーチ、質疑応答など、会見の模様を動画でご覧いただけます。

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記者会見スピーチ

豊田でございます。
本日はお忙しい中、私どもの記者会見にお越しいただき、誠にありがとうございます。

本日この場にて、2016年1月、米国に、人工知能に関する新たな研究・開発拠点、「TOYOTA Research Institute Inc.」を設立することを発表させていただきます。

新会社の最高経営責任者(CEO)には、米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)で「ロボティクス・チャレンジ」のプログラム・マネージャーを務めたことでも知られるGill Pratt氏に就任いただくことを決定いたしました。

私がGillと初めて会った今年の8月のことです。
私の第一声は、「なぜ、トヨタに来るの?」という極めてシンプルなものでした。
その問いに対し、彼は「社会に貢献したいからだ」と答えました。

彼は、このように続けました。
「人工知能は事故のリスクを減らすことはできるが、人間の介在なしにはゼロにはできない。安全・安心なクルマ社会の実現には、機械が人間と協調することが重要だ。その重要性は、モビリティ以外でも同じで、人工知能には、社会をより豊かなものにする大きな可能性がある。」

人工知能の分野で「米国の至宝」とまで呼ばれる偉大な研究者の答えは、私たちトヨタの創業の理念と全く同じだったからです。

技術革新が進めば進むほど、私たちは自らの製品を進化させることができます。
しかし、私たちがイノベーションを追求するのは「技術的に可能だから」ではなく、「目指すべきものがあるから」です。

人工知能技術とビッグデータを結びつけることで、自動車以外の新しい産業を創出することも可能になります。

私たちは、モビリティの枠を超えて、人々の生活や社会をより豊かなものにするために、この技術を役立たせたいと考えています。

私たちは、人工知能のような新しい技術を取り入れることによって、今日はもちろん、明日も、次の100年も、もっと安全で、もっと楽しい、希望に満ちた社会をつくってまいります。

彼と一緒にやってみよう、やってみたい、と思ったのは、彼が偉大な研究者だからではありません。
私たちと、彼の目指すゴール、そこに向かう志が同じだ、と確信したからです。

彼が、35年前にカローラを修理しているときの自身の写真を見せてくれました。この写真を見た時、本当に彼と働きたいと思いました!

とてもいいヘアスタイルです、ギルさん。

真面目な話に戻りますが、私は、彼がトヨタにとって大きな財産になると思っています。

それでは、目標に向けともにチャレンジする私たちの新しい仲間を紹介いたします。
Gill Pratt氏です。

豊田社長、ありがとうございます。

皆さんこんにちは。

数か月前、トヨタの幹部の方々と話をしはじめるようになり、人工知能やロボット分野の技術革新を加速させる彼らの情熱を伺いました。

最初私は、トヨタは単に、競合他社や人工知能分野で力をつけてきた企業との競争に勝ちたいだけなのだと思っていました。

しかし、会議を重ねるにつけ、彼らの目標の視野の広さに、私は目をどんどん見開くことになりました。

より高位の役員に会うほどに目標は野心的なものになり、私はトヨタが達成したいことの重要性を理解するようになりました。

TRIの目的は、基礎研究と、人の命を救い、人の暮らしをより豊かにする製品開発との間のギャップを埋めることにあります。

TRIではまず、協調自動技術や人工知能、すなわち、特にモビリティの分野で機械と人が協力する方法の研究に注力します。

その目標は、安全、アクセシビリティ、ロボットの3分野に亘ります。

安全に対する目標は、ドライバーの行動を問わず、クルマが事故にあわないようにすることです。

アクセシビリティに対する目標は、老若男女、身体能力を問わず、全ての人が移動の自由を享受できるようにすることです。

ロボットに関する目標は、全ての人の暮らしを豊かにすることです。
特に、年齢や病状を問わず、高齢者が自宅で尊厳のある老後を過ごすことができるようにしたいと思っております。

ここで少し私自身と、私の想いがどこから来るのか、お話しさせていただければと思います。

1950年代に米国に移住した私の父は、ニュージャージー州エディソンにあるフォードの組立ラインで働いていました。

父は夜には、化学工学や環境技術、特に大気汚染について学んでいました。
私は父から、クルマのしくみや大気汚染の管理手法について学びました。

また、多くの子供達同様、学校から帰るとTVを見ていました。

好きだった番組の一つが「ギガンター」でした。
少年が巨大ロボットを操る日本のアニメ、「鉄人28号」の吹き替え版でした。
私もいつか、そんなロボットを作ってみたいと思っていました。

私は幸運にも、ベル研究所の近くの高校に通うことができました。
この研究所では、週に1回、世界トップレベルの科学者の指導を受けるプログラムを実施していました。

大学の夏休みには、ベル研究所の物理・コンピュータ科学部門で働きました。
そこで私は、本当に賢い人が何を考えているのか、優れたマネジメントがどのようにして米国至宝の研究所を作り上げるのかを学びました。

そして私は21年間、大学院生から、電気工学・コンピュータ科学の助教授になるまで、MITに通うことになりました。

また、趣味として、MITのソーラーカーの電力関係の設計も行っていました。

MITの教授だった時、DARPAの資金援助のもと、歩行ロボットの開発に関わりました。
ご想像の通り、これらのロボットは鉄人28号にそっくりでした。
残念ながらジェットエンジンは付いておらず、飛ぶことができませんでしたが。

2010年には、DARPAからの資金援助への恩返しとして、同局でプログラム・マネジャーとして働くことにしました。

2011年3月11日、東日本大震災や津波が日本を襲ったとき、私はDARPAで働いていました。

地震の翌週、DARPAが以前資金援助していたロボット工学の会社とともに、放射線耐性を測り、パックボット、タロン、サンダーホークといったロボットを福島へ派遣すべく電話で指揮を執っていましたが、うまくいかず、(水素)爆発が起こってしまいました。

この失敗から学び、DARPAロボティクス・チャレンジを企画することにしました。
災害の被害軽減のため人のパートナーとなりうるロボットを開発する、3年・1億ドル規模のプログラムです。

ロボット技術で日本と共に働いたMITでの経験から、災害ロボットの分野での協調を進めるべく、その議論のために、同僚と何度も日米を往復しました。

こうした交渉は実を結び、日本政府からも多額の投資をいただけました。
ある日本のチームが第2予選で首位となり、本選には、5つの日本のチームが残りました。
このプログラムは、ロボット技術史に大きな名を残しました。

ここで、私の人生で起こった3つの悲しい出来事と、それがTRIで取り組むこととどのように関係するかをお話します。

1つ目は、小学生の時、帰宅途中に死亡事故に遭遇したことです。

自転車に乗っていた少年が道路で、車にひかれ亡くなってしまったのです。
今でも当時の恐ろしい光景を思い出します。
救助隊員が救命措置を行う中、ドライバーが頭を抱えて座り込んでいました。
ショックを受けて帰宅しました。
一生忘れられないでしょう。

2つ目は、私の父が83歳になった時、彼からクルマのキーを取り上げざるを得なかったことです。
家族全員にとって大変残念な日となりました。

最後は、父が84歳になり、介護施設への入居を余儀なくされたことです。

TRIの3つの目標である、安全、アクセシビリティ、そしてロボットは、こうした出来事を経験した私にとって大変重要なものです。
TRIでは、世界中の家族がこうした悲しい出来事を経験しなくてすむようにすべく取り組みます。

今回の発表は始まりにすぎず、こうした目標は私一人では達成できません。

トヨタの一員として「もっといいクルマ」づくりに取り組み、モビリティ技術を通じ、世界中の人々の暮らしを豊かにしたいと思っております。

最後に、この話で私のスピーチを終わりたいと思います。

トヨタは毎年、約1000万台のクルマを販売しています。
10年間では約1億台になります。
仮にその1台1台が年間1万キロを走るとすると、計算上、合計で年間1兆キロもの実走行データとなりうるのです。

世界中のあらゆる条件下で走るトヨタ車からえられる可能性がある膨大な走行データは、技術の進化を加速させるための重要なキーになり得ます。

その一方、こうした膨大な走行距離や多様な地理条件は、そこでの信頼性確保がいかに難しい課題かを同時に物語っています。

私は、トヨタの高い志と規模の融合に、人工知能技術が人々の生活や社会に大きく貢献ができる可能性を見出したのです。

これまで人工知能のクルマやロボットへの応用の可能性についてお話してきましたが、人工知能はそれ以上に、社会活動全般に幅広く応用しうるのです。

例えば、人工知能を用いて、車両手配、交通流の管理、物資輸送を行うことも可能となりえます。
さらには、トヨタ生産システムを超える生産管理や、材料・環境技術の発展を加速させることもできるかもしれません。

TRIでは、トヨタという組織の枠を広げ、他分野での応用に向けた技術開発を行い、社会に貢献したいと考えております。

そして、ハードウェアで成功したトヨタが、ソフトウェア技術と融合した新たな企業に生まれ変わることで、世の中に大きく貢献できると信じています。
だからこそ私はトヨタの一員となったのです。

先週の東京モーターショーで、豊田社長は、バッターボックスに立って真正面からチャレンジに取組み、何が起きても言い訳をせず責任を取ることの大切さを語りました。

今度は、私がバッターボックスに立つ番です。

たゆまぬチャレンジこそ、我々に世界を変える力を与えてくれるのだと、私は信じています。

TRIでの仕事が待ち遠しいです。

ありがとうございました。

以上

トヨタ自動車、「人工知能技術」の研究・開発強化に向け新会社を設立
トヨタ自動車、「人工知能技術」の研究・開発強化に向け新会社を設立

トヨタ自動車(株)(以下、トヨタ)は、2016年1月に、人工知能技術の研究・開発の拠点として、新会社「TOYOTA RESEARCH INSTITUTE, INC.」(以下、TRI)を、米国カリフォルニア州の通称“シリコンバレー”に設立し、今後5年間で約10億ドルを投入する。

トヨタ、マサチューセッツ工科大学およびスタンフォード大学と連携研究センターを設立
-クルマやロボットの知能化に関する研究を強化するため、ギル・プラット博士を招聘-
トヨタ、マサチューセッツ工科大学およびスタンフォード大学と連携研究センターを設立

トヨタ自動車(株)(以下、トヨタ)は、米国のマサチューセッツ工科大学のコンピュータ科学・人工知能研究所(Computer Science and Artificial Intelligence Laboratory : 以下、CSAIL)およびスタンフォード大学のスタンフォード人工知能研究所(Stanford Artificial Intelligence Laboratory : 以下、SAIL)と、人工知能に関する研究で連携していくことに合意した。今後5年間でトヨタは、合計約5000万米ドルの予算を投じ、CSAILおよびSAILそれぞれと連携研究センターを設立する。

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  • 新会社「TOYOTA RESEARCH INSTITUTE, INC.」設立に関する記者会見
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